BeerDroidのEOFは本当に合う?Traditional Irish StoutをRAPT Pillで追跡
BeerDroidは自動で「発酵終了(EOF)」を判断してくれます。でも、その瞬間に実際の比重はどうなっているのか。今回はBrewArt Traditional Irish StoutにRAPT Pillを一緒に入れ、SGと温度を連続記録して答え合わせしました。結果は、BeerDroidが6日1時間でEOFを通知した時点で、RAPTのSGもすでに1.012台を中心にほぼ横ばい。BeerDroidの判定ロジックそのものを解析したわけではありませんが、少なくともこの1バッチでは「自動判定」と「独立した比重トレンド」がきれいに重なりました。

先に結果
| バッチ | BrewArt Traditional Irish Stout / 10 L(約2.6 gal) |
|---|---|
| BrewArt公式値 | ABV 4.5% / Colour 134 / Bitterness 33 / Propagate 18℃ → Ferment 17℃ → Keg 18℃ → Store 4℃ / 約5〜7日[1] |
| BeerDroid EOF | 6日1時間で発酵終了通知。そのままReady to Kegへ。 |
| RAPT:最初の妥当なSG(OG参考値) | 1.04435。投入直後は原料層やPillの姿勢の影響が考えられるため「first plausible OG」として扱う。 |
| EOF前約24時間 | SG平均 1.01266、範囲1.01156〜1.01328。持続的な低下は見られず、ほぼ横ばい。 |
| 概算 | 見かけ発酵度 約71.5%、推定ABV 約4.16%(最初の妥当なSG(OG参考値)と最終24h平均SGからの参考計算)。 |
| 味見 | しっかりした苦味の奥にほんのり甘さ。ヨーグルトやミルクを思わせる、淡いやわらかな酸味と丸み。 |
今回の疑問:BeerDroidのEOFを、比重で答え合わせしたい
これまでBeerDroidでは、アプリと本体の「Ready to Keg」を発酵終了の基準にしてきました。温度や日数は追えても、発酵液のSGがどんなカーブで下がり、どのタイミングで止まったのかは見えていませんでした。
Discovery Pale Aleでは、BeerDroidの温度推移とReady to Kegまでを記録。今回はそこから一歩進めて、RAPT PillでSGまで追いました。
そこで今回は、Wi-Fi / Bluetooth対応の浮遊式デジタル比重計RAPT Pillを投入。KegLandはRAPT Pillを、発酵容器内部からリアルタイムの比重と温度を記録できる機器として案内しており、公称精度はSG ±0.002、温度 ±0.2℃です。外側に固形物が付着すると比重精度に影響する可能性も明記されています。[2]
今回使ったもの
BrewArt BeerDroid
10 Lの自動醸造機。温度制御とEOF / Ready to Keg通知はBeerDroid側に任せました。
Traditional Irish Stout BrewPrint
今回の手元の構成はE1、E3、E4、X4、Y2。BrewArt公式ページでも同じ構成が確認できます。[1]
Traditional Irish StoutをBrewArt公式で見る →
RAPT Pill Hydrometer & Thermometer
発酵中のSGと温度を独立して記録するために使用しました。[2]
BrewArt Complete Kegging Pack(ケグセット)
BeerDroidから2本の5 Lケグへ移送するために使用しました。ケグ、キャップ、スピア、充填チューブ、ケグライナーなどを含むBrewArtのケギングセットです。
Complete Kegging PackをBrewArt公式で見る →
Five Star Star San Sanitizer
RAPT Pill、ケグ、キャップ、スピアなど、ビールに触れる機材・部品のサニタイズに使用しました。
Traditional Irish Stoutの公式プロファイル
BrewArt公式のTraditional Irish Stoutは、クリーミーなタン色の泡、brown-black〜garnetの色調、ローストコーヒーと大麦の香り、ローストコーヒーとダークチョコの味を狙ったスタウトです。フィニッシュは“slightly acidic”と説明されています。ABV 4.5%、Colour 134、Bitterness 33、醸造目安は5〜7日です。[1]
※BrewArt公式の5〜7日はBeerDroid内の醸造目安で、ケグ詰め後の最低14日間の二次発酵/熟成は別です。今回の味見は、その熟成前の若いサンプルとして記録しています。[1]
この「わずかな酸味」は、あとで味見したときの自分の印象と少し重なりました。ただし、私が感じた「ヨーグルト/ミルクっぽい」という連想は公式表現ではなく、あくまで今回の官能的なメモです。
仕込み:BrewPrintにRAPT Pillを追加



温度プログラム:18℃ Propagate → 17℃ Ferment
Traditional Irish Stoutの公式プログラムは、Propagate 18℃(64°F)、Ferment 17℃(63°F)、Keg 18℃(64°F)、Store 4℃(39°F)。[1] 仕込み開始時のBeerDroid本体は約22℃表示でしたが、約8時間でアプリはPropagate、Now 17.5℃ / Target 18℃。約17時間ではFermentへ移り、Now 16.6℃ / Target 17℃になっていました。
以下はBeerDroidアプリの代表スナップショットです。これは連続ロガーの平均ではなく、その時点のBeerDroid側「Now」表示です。後半のRAPTグラフは別センサーなので、両者の数値が完全一致することを前提にはしていません。
| 経過 | ゾーン | Now | Target | Ambient |
|---|---|---|---|---|
| 8時間 | Propagate | 17.5℃ | 18℃ | 27.1℃ |
| 17時間 | Ferment | 16.6℃ | 17℃ | 25.2℃ |
| 1日 | Ferment | 16.8〜18.0℃ | 17℃ | 24.1〜27.0℃ |
| 2日 | Ferment | 16.8〜17.8℃ | 17℃ | 25.4〜26.2℃ |
| 3日 | Ferment | 16.1〜16.2℃ | 17℃ | 25.2〜26.9℃ |
| 4日 | Ferment | 16.3〜16.6℃ | 17℃ | 26.0〜26.4℃ |
| 5日 | Ferment | 17.1〜17.8℃ | 17℃ | 26.5〜26.6℃ |



RAPT Pillで見るSGと温度:下がる区間と、止まる区間が見えた
今回一番見たかったのはこのグラフです。仕込み開始をDAY1として表示しました。SGとRAPT内部温度を同じ時間軸にし、BeerDroidがEOF / Ready to Kegへ入った付近を縦線で示しています。

投入直後のPillは乾燥原料の層に囲まれており、最初の数点は姿勢や付着物の影響を受けた可能性があります。そこで、今回の解析では最初に妥当と判断できるSG 1.04435をOGの参考値とし、「開始直後の1点」を過度に精密な真値として扱わないことにしました。
平均SG 1.01266、最小1.01156、最大1.01328。RAPT温度は平均約17.03℃、範囲16.25〜18.25℃でした。RAPTの公称SG精度は±0.002なので[2]、この程度の細かな上下よりも、「終盤に持続的な下降トレンドがなくなった」ことを重視しています。
最初の妥当なSG(OG参考値)1.04435と、EOF前24時間の平均SG 1.01266から単純計算すると、見かけ発酵度は約71.5%、ABVは約4.16%。BrewArt公式の4.5%に近い値ですが、RAPTの測定誤差、スタート時の姿勢、今回のOG選定を考えると、これは参考推定として扱うのが妥当です。
6日1時間でEOF。BeerDroidの通知時、SGもすでに横ばいだった
仕込みから6日1時間、BeerDroidから「発酵が終了した」という通知と、「Kegging Temperatureに到達してReady to Keg」という通知が届きました。Traditional Irish Stoutの公式目安5〜7日の範囲内です。[1]

ここで言えるのは、BeerDroidが何を内部判定に使っているかではありません。そのアルゴリズムは今回検証していません。言えるのは「このバッチでは、BeerDroidがEOFを出したタイミングと、独立して測ったRAPTのSGがほぼ止まったタイミングが一致した」ということです。これが今回の一番の収穫でした。
ケグ詰め後はBeerDroidから液体が抜け、Pillが自由に浮かべない状態になります。そこから先に出た非現実的なSGジャンプは発酵データとして使わず、移送前の連続ログだけで判定しました。
ケグ詰め:パーツを洗浄・サニタイズして10 Lを移送

味見:苦味の奥に甘さ、そして淡い酸味

まず、しっかりした苦味。その奥からほんのり甘さがのぞく。さらに、ヨーグルトやミルクを思わせるような、淡いやわらかな酸味と、丸みのある甘さを少し感じました。
BrewArt公式はローストコーヒー/大麦の香り、ローストコーヒー/ダークチョコの味に加え、フィニッシュを「slightly acidic」と説明しています。[1] 今回の自分の印象では、ローストコーヒーやチョコレートを言語化するより先に、苦味の奥の甘さと、乳製品を連想する淡い酸味が目立ちました。
ただし「ヨーグルト/ミルク」は香味の連想であって、乳酸発酵や感染を意味するものではありません。また、このサンプルはケグ熟成前なので、完成後に同じバランスで残るとも限りません。


今回分かったこと
- Traditional Irish Stoutは今回、6日1時間でBeerDroid EOF / Ready to Keg。公式5〜7日の範囲内だった。
- RAPT Pillでは、EOF前約24時間のSGが平均1.01266、1.01156〜1.01328の範囲で推移し、持続的な下降は見られなかった。
- つまりこの1バッチでは、BeerDroidの自動EOFと、独立したSGの横ばいがよく一致した。
- RAPTの最初の妥当なSG(OG参考値)と最終24h平均からの参考計算は、見かけ発酵度約71.5%、ABV約4.16%。公式4.5%に近いが、測定誤差を含む推定値。
- 味見では、しっかりした苦味、奥のほんのりした甘さ、淡いやわらかな酸味。公式の「slightly acidic」という方向とは重なる部分があった。
- 一方、BeerDroidのEOFアルゴリズムそのものを解明したわけではない。今回確認できたのは、あくまで「判定時の実測SGがどうだったか」。
まとめ:RAPT Pillを入れると「Ready to Keg」の中身が見える
これまではBeerDroidの通知を見て「発酵が終わった」と受け取っていました。今回はRAPT Pillを追加したことで、その裏側でSGがどんな速度で落ち、どこで止まったのかを初めて連続データとして残せました。
結果、Traditional Irish Stoutでは6日1時間のEOF直前にSGがすでにほぼ横ばい。少なくともこのバッチでは、BeerDroidのReady to Kegを独立測定でも納得できる形で確認できました。次に同じことを別スタイルでやれば、BeerDroidの自動判定とSGカーブの関係をバッチ横断で比較できそうです。
参考文献
- BrewArt, Traditional Irish Stout(公式の香味説明、ABV 4.5%、Colour 134、Bitterness 33、18℃→17℃→18℃→4℃プログラム、醸造目安5〜7日)
- KegLand, RAPT Pill Hydrometer & Thermometer(発酵容器内のリアルタイムSG・温度ログ、公称精度SG ±0.002 / 温度 ±0.2℃、付着物による誤差への注意)
- BrewArt, BrewArt US(BeerDroid製品情報)
- BrewArt, BeerDroid Instruction Manual(BeerDroidの仕込み・EOF・ケギング運用の参考)
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Webでは実験がひと区切りついたところで写真・動画・数字を整理しています。仕込み中の様子はXの @ConyDIYHouston で更新しています。