BrewPrintの次へ|BrewfatherでBeerDroid 10L用Witbierを設計した

手持ちのBrewPrintも、残すはDiscovery Pale AleとTraditional Irish Stout。これを仕込んだら、次は完成キットを入れるだけではなく、材料を自分で選ぶ仕込みへ進みたい。BrewArt TeamのHoegaarden Wheat Cloneを入口に、BrewfatherでBeerDroid 10L用Witbierを設計してみました。途中でOG、原料データ、色、ホップ、スパイスを一つずつ見直した過程までまとめます。

残りのBrewPrint、BrewArt TeamのHoegaarden Wheat Clone投稿、Brewfatherで設計したWitbier v1
BrewPrint → BrewArt純正材料のClone → Brewfatherで自作レシピへ。今回の記事は、その移行をレシピ設計の数字と一緒に追う。
この記事は「レシピ設計編」です。
OG・FG・ABV・IBU・色・発酵条件は、現時点ではBrewfather上の設計値です。実際の仕込み、発酵、実飲結果は別途記録します。

今回作ったレシピ

仕込み量10 L
Recipe Type / StyleExtract / 24A Witbier [8]
Bavarian Wheat DME900 g
Pilsen Light DME450 g
Czech Saaz10 g / 60 min(AA 4.5%は設計時の仮値)
Coriander Seed2 g / 5 min
Bitter Orange Peel3.5 g / 5 min
YeastLallemand LalBrew Wit ×1
Primary19℃ / 7 days(設計値)
計算値OG 1.046 / FG 1.008 / ABV 5.0% / IBU 12 / Color 5.7 EBC / BU:GU 0.26 / Carbonation 2.4 vol

1. 出発点はBrewArt Teamの「Hoegaarden Wheat Clone」

BrewPrintの次を考えていたとき、BrewArtist Communityで見つけたのが、BrewArt Teamが公開している「Hoegaarden Wheat Clone」でした。10L向けの材料は、E5 ×1 / X2 ×4 / Y5 ×1 / crushed Coriander Seed 2 g / Dried Curaçao Orange Peel 3.5 g。Brewing Programは通常のAleです。BrewArt Teamは、1 Lの湯でスパイスを30分浸出し、その液を9 Lの水と合わせて22℃まで下げてからYeast / Elements / Enhancersを加える方法を案内し、目安を約5.5% ABV、12 IBU、11 EBCとしています。[1]

BrewArt Teamが公開したHoegaarden Wheat Cloneのレシピ投稿
BrewArt Teamの元レシピ。BrewPrintではなくE5 / X2 / Y5を組み合わせ、コリアンダーとオレンジピールを追加する。
BrewArt Element 5 E5の商品画面
E5。250g、minimal color、subtle malt、medium-firm bitterness。[2]
BrewArt Enhancer 2 X2の商品画面
X2。250g、light style向けで、soft mouthfeelとhead retentionを補う。[3]
BrewArt Yeast 5 Y5の商品画面
Y5。小麦ビール向けで、温度やpitching rateによりbanana / clove系の表現が変わる。[4]

つまり、「完成済みのBrewPrintを1箱使う」スタイルから、同じBrewArtでもE / X / Yを自分で選んで組み合わせる仕込みへ移れる。これが次の一歩として面白そうでした。

2. どうせスパイスを揃えるなら、自分のレシピも作ってみる

Hoegaarden Cloneはそのまま試してみたい。一方で、このレシピにはBrewArt純正材料以外にコリアンダーとオレンジピールが必要です。どうせ完成キット以外の材料まで揃えるなら、純正Cloneを再現するだけで終わるのは少しもったいない。

そこで、BeerDroidで仕込める10L Witbierを、自分で数字を見ながら設計することにしました。使ったのがBrewfatherです。Recipe Designerでは、材料を変更するとOG、FG、ABV、IBU、色などの予測値がリアルタイムで更新されます。[5]

3. Brewfatherで10L / Extractからスタート

最初はTypeをExtract、Batch Volumeを10 L、Styleを24A Witbierに設定。BJCP 2021 Beer Style Guidelinesでも24AはWitbierとして分類されています。[8] Bavarian Wheat DME 900 gとPilsen Light DME 450 g、合計1.35 kgから始めました。

Brewfatherで10L Extract Witbierを作り始めた画面
10 L / Extractで開始。Wheat DME 900 g + Pilsen DME 450 gを入力した時点。

ところが最初に出てきた数字はOG 1.036、ABV 3.5%。狙いより明らかに低い。材料量を増やす前に、まず「なぜこの数字になっているのか」を確認しました。

4. 最初の違和感:Wheat DMEのPotentialが1.036

最初に作っていたBavarian Wheat DMEの登録内容を開くと、Potentialが1.036になっていました。

Bavarian Wheat DMEのPotentialが1.036になっていたBrewfather画面
OGが低かった原因候補。これはBrewfatherの推奨値ではなく、私が使っていた原料登録の途中値。

そこでBrewfather内の既存原料を検索し直し、Briess Bavarian WheatとPilsen Lightの登録値を確認。今回の計算では、Brewfather内のBriessデータに合わせてPotential 1.045 / Yield 97%へ修正しました。Briessの現行資料では、Bavarian Wheat DMEは3 SRM、Pilsen Light DMEは2 SRMの製品として案内されています。[6]

Brewfather内でBriess Wheatを検索した画面
Brewfatherの既存原料を検索。
BrewfatherのBriess Bavarian Wheat登録値
Bavarian Wheat:今回使ったBrewfather内の登録値。
BrewfatherのBriess Pilsen Light登録値
Pilsen Lightも同様に確認。

原料量は変えていないのに、OGは1.036 → 1.046へ。ここで大事だったのは「Brewfatherが間違っていた」という話ではありません。計算に使う原料レコードの値が何になっているかを確認する必要があった、ということです。

5. OGは直った。でも今度は色が10.2 EBC

Potentialを修正するとOGは狙いに入りましたが、Colorは10.2 EBC。Wheat DME側の色設定を見ると15.8 EBCになっていたため、もう一度製品仕様と照合しました。

DME Potential修正後にOG1.046、Color10.2EBCとなったBrewfather画面
Potential修正後。OGは1.046だが、Colorは10.2 EBC。
DMEの色設定修正後にColor5.7EBCとなったBrewfather画面
Bavarian Wheatを5.9 EBC、Pilsen Lightを約4 EBC相当に合わせ、全体は5.7 EBCへ。

Briessの現行資料ではBavarian Wheat DMEが3 SRM(約5.9 EBC)、Pilsen Light DMEが2 SRM(約3.9 EBC)。[6] そこに合わせると、レシピ全体は5.7 EBCになりました。

6. 苦味はSaaz 10g / 60分で12 IBUを狙う

次はホップ。Brewfather内でSaazを検索すると複数候補があるため、今回は設計時の仮値としてCzech Saaz / Alpha Acid 4.5%を選択しました。

BrewfatherでSaazの候補を検索した画面
Saazにも複数候補があるので、設計用のAA%を決める。
Czech Saaz 10gを60分で設定しIBU12となったBrewfather画面
10 g / 60 minで、Brewfather上は約12 IBU。

これは出発点にしたBrewArt TeamのCloneと同じ12 IBUです。[1] ただしホップのAA%はロットで変わるので、仕込み前には購入したSaazの表示値へ入れ替えて再計算します。

7. スパイスと酵母を詰める

MiscへCoriander SeedとBitter Orange Peelを追加した途中では、22.92 g / 40.1 gという今回の意図とはまったく違う値が入っていました。これもBrewfatherの推奨量ではなく、追加・入力途中の値です。

LalBrew Wit追加後でスパイス修正前のBrewfather画面
入力途中では22.92 g / 40.1 gのままになっていたが、その値は使わない。LalBrew Witを追加。発酵Profileもこの時点では仮。
Coriander2g、Orange Peel3.5g、Primary19Cに修正したBrewfather画面
スパイスを2 g / 3.5 gへ、Primaryを19℃へ修正。

スパイスは元のBrewArt Teamレシピを基準にCoriander 2 g / Bitter Orange Peel 3.5 gへ。酵母はLallemand LalBrew Witを選びました。LallemandはLalBrew Witの発酵温度範囲を17–25℃、attenuationを75–82%と案内しています。[7] 今回はその範囲内の19℃ / 7 daysを設計値にしています。

8. 最終レシピ:BeerDroid 10L Witbier v1

Witbier v1のBrewfather最終レシピ要約
Witbier v1。OG 1.046 / FG 1.008 / ABV 5.0% / IBU 12 / Color 5.7 EBC。

BrewArt TeamのHoegaarden Cloneをきっかけに始めましたが、これはBrewArt純正材料をそのまま置き換えたレシピではありません。DME、Saaz、LalBrew Witを使い、Brewfather上の数字を確認しながら組み直した自分用のBeerDroid 10L Witbier v1です。

9. 一番面白かったのは「数字を疑う」工程

今回Brewfatherを使って一番面白かったのは、自動計算そのものより、数字を見て違和感を拾う工程でした。

  1. 材料を入れる
  2. 数字を見る
  3. 「何かおかしい」と気づく
  4. 原料データや条件を確認する
  5. 修正する
  6. もう一度計算する

最初のOG 1.036を見てすぐDMEを増やしていたら、必要以上に濃いレシピにしていたかもしれません。Potentialを見直すと1.046。次にColor 10.2 EBCを見て色の設定を確認すると5.7 EBC。SaazもAA%でIBUが変わり、スパイスも追加しただけでは意図した量になりませんでした。

今回の結論

計算ツールはとても便利。でも、入力値や選んだ原料レコードが違えば、計算はその前提で正確に進みます。だから「数字が出た」だけで終わらず、違和感があれば入力側を確認するところまでがレシピ開発。

10. 次は「このレシピをいくらで仕込めるか」

レシピ自体は完成しました。次に気になるのは、これを何バッチも仕込むときの材料の買い方です。BrewArt純正材料で組む場合と、DME・ホップ・酵母・スパイスを個別に揃える場合では、単純な1回分の材料費だけでなく、まとめ買い、余り、送料、Primer、Keg liner、sanitizerまで含めると実際のコストが変わります。

その原価比較と買い物リストは、次の記事で実測電力や設備費まで含めて整理しました。
BeerDroidの原価比較を見る →

まとめ

BrewPrintの在庫がなくなりそうになったことをきっかけに、まずBrewArt TeamのHoegaarden Wheat Cloneへ。そのレシピでスパイスまで別に揃えるなら、自分でもBeerDroid用Witbierを作ってみようとBrewfatherを使い始めました。

最終設計値はOG 1.046 / FG 1.008 / ABV 5.0% / IBU 12 / 5.7 EBC。ただし、まだこれは計算上のv1。本当に狙ったWitbierになるかは、BeerDroidで仕込み、発酵させ、飲んでみて確認します。そこまで含めて次の実験です。

参考文献

  1. BrewArt Team, Hoegaarden Wheat Clone(E5 / X2 / Y5、コリアンダー、オレンジピール、Ale program、約5.5% ABV / 12 IBU / 11 EBC、2024年の5–7日目安)
  2. BrewArt, Element 5 (E5)(250g、色・モルト・苦味の製品説明)
  3. BrewArt, Enhancer 2 (X2)(250g、lighter style、mouthfeel / head retentionの製品説明)
  4. BrewArt, Yeast 5 (Y5)(wheat yeast、banana / clove、18–22℃の推奨Ferment範囲)
  5. Brewfather, Recipe Designer documentation(レシピ設計と予測値のリアルタイム更新)
  6. Briess, Brewer's Grade Malt Extracts(Bavarian Wheat DME 3 SRM / Pilsen Light DME 2 SRM等の製品情報)
  7. Lallemand Brewing, LalBrew Wit™(温度範囲17–25℃、attenuation 75–82%等)
  8. Beer Judge Certification Program (BJCP), 2021 Beer Style Guidelines — 24A. Witbier(Witbierのスタイル分類)

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