屋根の穴だけで本当に換気できる?
GAFのパッシブ換気を物理で見積もってみた

家を買ったとき、屋根はすでに約30年選手。交換を機に、GAFの連続型パッシブ換気に変わりました。 ファンもモーターもないのに、実際どれくらい空気が動くんだろう? 気になったので、屋根の寸法と屋根裏温度を使ってCFM・ACH・排熱量までざっくり計算してみました。

屋根裏のデッキ材に残る過去の雨漏り跡
ホームインスペクションで確認した、屋根裏の過去の雨漏り跡。

今回の結論

代表条件での簡易計算結果
屋根裏温度45.2℃、外気約35℃ → 代表値 ΔT=10℃
無風約642 CFM / 約5.6 ACH / 約3.5 kW排熱
2 m/s・ΔCp=0.3約842 CFM / 約7.3 ACH / 約4.6 kW排熱
4 m/s・ΔCp=0.3約1,265 CFM / 約11.0 ACH / 約6.9 kW排熱
注意CFMは実測ではなく簡易物理モデルによる概算

屋根を交換したら、換気方式も変わった

家を購入するときのホームインスペクションで、屋根裏のデッキ材に過去の雨漏りと思われる跡が見つかりました。 売り手は把握していなかったようですが、屋根自体も約30年経過。 さすがに寿命も近いだろうということで、入居後に屋根を丸ごと交換することにしました。

新しい屋根は、保証面も含めてGAFのルーフィングシステムを採用。 以前は屋根の上に風車のようなturbine ventが付いていたと思いますが、今回は屋根の低い位置から外気を取り込み、棟から抜く連続型のパッシブ換気になりました。

ここで気になったのが、ファンなしで本当にそんなに換気できるの?ということ。 せっかくなので、自宅の実測値を使って簡易計算してみます。

※ 風で回るturbine ventも厳密にはパッシブ換気です。この記事では、以前のturbine ventと、今回の「連続intake+ridge vent」方式を区別して書いています。

今回の換気システム

施工写真と形状から、吸気側はGAF Cobra IntakePro® Rooftop Intake Vent、排気側はGAF Cobra Rigid Vent 3™が有力だと考えています。 IntakeProの公称Net Free Ventilating Area(NFA)は9 in²/linear ft、Rigid Vent 3は18 in²/linear ftです。[1][2]

軒先に連続して設置されたIntakeProと思われる縦チャネル
軒先のIntakeProと思われる部分。下から見ると、縦方向の細いチャネルが連続している。
屋根の棟に施工されたridge ventのクローズアップ
棟側のridge vent。

※ 製品名は施工写真と形状からの推定で、施工伝票による型番確認まではしていません。

まず、空気が通れる面積を出す

Google Earthと現地写真から施工長を測りました。

Intakeの施工長は28.22 m、約92.6 ft。 IntakeProが9 in²/linear ftなので、

Intake NFAAin = 92.6 × 9 ≒ 833 in²

ridge ventはメイン1本+サブ3本の合計4本。 Google Earth上では合計16.6 mでしたが、写真を見るとそれぞれ端いっぱいまでは施工されていません。 両端を約20 cmずつ短いとみて4本分補正し、実効長は約15.0 m、約49.2 ftとしました。

Ridge NFAAout = 49.2 × 18 ≒ 886 in²
IntakeとRidgeの推定施工長・NFA
IntakeRidge exhaust
推定施工長28.22 m約15.0 m(4本合計)
NFA833 in²886 in²
バランス94100
Google Earthの測定値をまとめた屋根換気寸法の模式図
Google Earthで測った値をまとめた模式図。

必要換気面積と比べる

屋根の水平投影面積は約186.44 m²、約2,007 ft²。 GAFが案内する1/300ルールを単純に当てると、必要な総NFAは約963 in²です。[2]

1/300 rule の簡易比較2,007 × 144 ÷ 300 ≒ 963 in²

今回の総NFAは833+886=1,719 in²。 少なくとも、換気口そのものが小さすぎる感じではなさそうです。

※ 2,007 ft²は屋根の水平投影面積で、厳密なattic floor areaではありません。軒の張り出しも含むので、ここも概算です。

温度差だけで、どれくらい空気が動く?

パッシブ換気を動かす1つ目の力が、屋根裏と外気の温度差によるスタック効果です。 暖かい空気は密度が小さくなるので、高いridge側から抜けようとし、低いIntake側から外気を引き込みます。

スタック効果による圧力差ΔPstack ≈ ρgH × (ΔT / T)

屋根勾配は図面がないので写真から4:12〜6:12程度と推定し、今回は中間の5:12を代表値にしました。 eaveからridgeまでの水平距離約6.36 mから、高さ差は約2.65 mです。

屋根裏温度を測ってみる

温度計を屋根裏空間の途中の高さに浮かせて測ると、午後3時前で45.2℃。 同時刻の外気温は約35℃でした。 途中でパラっと雨が降り、屋根裏温度もピーク47.8℃から下がってきていたので、今回は分かりやすくΔT=10℃を代表値にします。

屋根裏温度45.2℃を示す温湿度計アプリ画面
屋根裏空間の途中の高さで測定。45.2℃、相対湿度28%。

空気密度を約1.15 kg/m³として計算すると、

今回のスタック圧ΔPstack ≒ 1.15 × 9.81 × 2.65 × (10 / 313) ≒ 0.96 Pa

1 Paにも満たない。 最初は「こんな小さい圧力差で本当にそんなに空気が動く?」と思いました。

IntakeとRidgeを両方通る

空気はIntakeだけを通って終わりではなく、Intake → attic → Ridgeと入口と出口の両方を通ります。 そこで、2つの開口を直列として等価開口面積にまとめます。

等価開口面積Aeq = 1 / √(1/Ain² + 1/Aout²) ≒ 607 in² ≒ 0.392 m²

Cdは0.6に固定

実際の空気は、理想的な穴のようには流れません。 入口で流れが縮んだり、方向を変えたり、剥離したりするので、その分だけ実流量は減ります。 それをまとめて表すのが流量係数(discharge coefficient)Cdです。

ASHRAE Handbookでは、圧力損失データがない開口について、sharp-edged orificeを代表する値としてCd=0.6を使う例があります。[3]

もちろんIntakeProやRigid Vent 3そのものの実測Cdではありません。 でも今回はCFMを数%の精度で当てたいわけではなく、数十なのか、数百なのか、1,000 CFM級なのかを見たいだけ。 なのでCdは0.6に固定して進めます。

開口流量式でCFMを計算

圧力差から開口を通る流量を求める開口流量式(Orifice Flow Equation)を使います。

開口流量式(Orifice Flow Equation)Q = CdAeq √(2ΔP / ρ)

無風ならΔPはスタック効果だけ。

無風・ΔT=10℃ → 約642 CFM

ファンなしでも、温度差だけで600 CFM超という計算になりました。

次に、風の効果を加える

建物に風が当たると、場所によって静圧が変わります。 その変化を無次元化したのが風圧係数 Cpです。

圧力係数の定義Cp = (p − p∞) / (½ρV²)

Intake側とridge側の差を ΔCp = Cp,in − Cp,out とすると、風による駆動圧は、

風による圧力差ΔPwind = ½ρV²ΔCp

Intakeは「押す」、Ridgeは「吸う」

今回のIntakeは、軒側の壁に風が正面から当たると、壁面付近で流れが減速して正圧になりやすい。 そこで上下に分かれた上向き成分が、IntakeProの縦チャネルへ向かうイメージです。

壁面への風による正圧とIntakeProへの吸気経路を示す概念図
Intake側の概念図。壁に正面から風が当たると、よどみ圧と上向きの流れがIntakeへの流入を助けると考えた。

一方ridge側は、棟を越える流れに加えてexternal baffleが外の流れを上向きに曲げ、排気出口の近くに局所的な低圧域を作る構造と考えられます。 こちらは吸う側。

ridge ventのexternal baffle付近の低圧域と排気経路を示す概念図
Ridge側の概念図。中央スロットから入った屋根裏空気が左右へ分かれ、external baffle近傍の出口から上向きに排出されるイメージ。

つまり風向がうまく合えば、Intake側で押す + Ridge側で吸う。 この差がΔCpです。

※ 上の2つの概念図は構造と流れを理解するための模式図で、CFD解析結果ではありません。

ΔCpは1つに決めない

実際のCpは風向、屋根形状、周囲の家や木などで変わります。 そこで今回はΔCpを0.1 / 0.3 / 0.5 / 0.7で振って、0.3を通常〜やや有利な代表ケースにしました。

今回のΔCpケース設定
ΔCpイメージ
0.1軒・ridgeに対して不利。押し込み・吸引とも弱い
0.3通常〜やや有利。今回の代表ケース
0.5Intakeの押し込みとridge吸引がかなり成立
0.7両方がよく成立する有利な上側ケース

傾斜屋根住宅を実大測定したGullbrekkenらの研究では、屋根通気のengineering evaluation用として平均ΔCp=0.7が導かれています。[4] 今回と同じベント構造ではないので代表値にはせず、0.7は上側ケースのアンカーとして使います。

風速別に計算するとどうなる?

スタック効果+風圧ΔPtotal = ΔPstack + ΔPwind
風速とDelta Cpによる推定換気量のグラフ
ΔT=10℃、Cd=0.6、H=2.65 m、Aeq=607 in²での推定換気量。0 m/sではスタック効果のみ。
風速とΔCpによる推定換気量(CFM)
風速ΔCp=0.1ΔCp=0.3ΔCp=0.5ΔCp=0.7
0 m/s642642642642
2 m/s7158429531,052
4 m/s8991,2651,5471,785
6 m/s1,1421,7572,2072,580

代表ケースΔCp=0.3なら、無風で約642 CFM、2 m/sで約842 CFM、4 m/sで約1,265 CFM。 風が少し乗るだけで1,000 CFM級が見えてくるのは、正直かなり意外でした。

電動attic fanと比べると?

住宅用のpowered attic ventilatorには、1,000〜1,600 CFM級の製品例があります。[5] 今回の計算値と並べると、オーダー感が分かりやすいです。

今回の推定値とpowered attic fanの風量比較
条件風量
今回:無風約642 CFM
今回:2 m/s・ΔCp=0.3約842 CFM
今回:4 m/s・ΔCp=0.3約1,265 CFM
powered attic fanの製品例約1,000〜1,600 CFM級

弱い風があれば低風量側の電動attic fanに近づき、4 m/s程度の代表ケースなら1,000 CFM級を超える計算です。 もちろん、電動ファンは規定条件での製品値、こちらは簡易モデルによる推定値なので、直接の性能試験ではありません。

ACHにすると?

CFMだけだと屋根裏の大きさが分かりにくいので、次はACHで見ます。 ACHはAir Changes per Hourの略で、1時間にその空間の空気量何回分が入れ替わるか、という指標です。

換気回数(Air Changes per Hour)ACH = Qhour / Vattic

屋根はhip+gableの複合形状なので、屋根裏容積をピタッと出すのは難しい。 これまでの寸法から170〜220 m³くらいの範囲と見積もりましたが、この記事では結果を見やすくするため、中間の195 m³を代表値として固定します。

屋根裏容積195 m³で固定した代表ACH
条件CFMACH
無風6425.6 回/時
2 m/s・ΔCp=0.38427.3 回/時
4 m/s・ΔCp=0.31,26511.0 回/時

※ 実際の屋根裏容積が195 m³からズレればACHも比例して変わります。ここでは比較を分かりやすくするための代表値です。

換気で何kWの熱を捨てている?

最後に、換気空気が外へ運び出している顕熱を計算します。

換気による顕熱排出Q̇heat = ρQcpΔT

ΔT=10℃を固定すると、風量にほぼ比例して排熱量も増えます。

代表条件での推定排熱量
条件CFM排熱量
無風642約3.5 kW
2 m/s・ΔCp=0.3842約4.6 kW
4 m/s・ΔCp=0.31,265約6.9 kW
6 m/s・ΔCp=0.31,757約9.6 kW
無風、2m/s、4m/sの代表条件ごとのCFM、固定ACH、排熱量の比較
屋根裏容積を195 m³に固定した代表条件のまとめ。4 m/s・ΔCp=0.3では約11.0 ACH、約6.9 kW排熱。

数kWの排熱って大きすぎない?

最初にこの数字を見たとき、僕も「屋根の穴だけで3〜7 kW?」と思いました。 なので、屋根が受けている日射のオーダーと比べてみます。

米国DOEが太陽光発電モジュールのStandard Test Conditionsで使う基準日射強度は1,000 W/m²です。[6] もちろん、その日のHoustonの日射実測値ではなく、いわゆる「1 sun」の基準値です。

日射の瞬間的なオーダー比較186.44 m² × 1,000 W/m² ≒ 186 kW

さらにHoustonの8月は、水平面の日積算日射量が約5.47 kWh/m²/dayという資料もあります。[7] 今回の186.44 m²を単純に掛ければ、水平投影面換算で約1,020 kWh/dayの太陽エネルギーが降り注ぐ規模です。

当然、その全部が屋根裏の熱になるわけではありません。 反射、屋根表面から外気への対流、長波放射、屋根勾配や太陽角度もあります。 それでも、100 kWを超えるオーダーの日射を受ける屋根から数kWを換気で運び出す、という計算自体はそこまで変な桁ではなさそうです。

排熱6.9 kW = エアコン消費電力が6.9 kW減る、ではない

換気がなければ、その熱が全部室内へ入るわけではありません。天井断熱などが室内への熱移動を大きく抑えています。 ここで計算しているのは、あくまで換気空気が屋根裏から外へ運び出している顕熱です。

で、実際に屋根裏温度は下がっているのか?

ここまでは、ベントの寸法や温度差から換気量を「計算」してきました。 でも、計算上は換気できるとしても、実際の屋根裏がどう動いているのかは別の話です。

そこで、屋根裏温度を夕方から翌朝まで記録してみました。 外気温は自宅敷地での実測ではなく、周辺地域の公開観測値を参考として重ねています。

屋根裏温度と周辺地域の公開外気温の時系列比較グラフ
夕方から翌朝までの屋根裏温度ログ。日付は非表示。外気温は周辺地域の公開観測値を参考値として使用。

日中は屋根裏が45〜48℃前後まで上がっていましたが、夕方以降は外気温の低下に追従するように温度が下がっていきました。 そして深夜から明け方にかけては、屋根裏温度が外気温とほぼ同じところまで収束しています。

もちろん、このグラフだけで「何CFM換気している」と直接証明することはできません。 屋根表面からの放熱や夜間放射なども同時に効いているはずです。

ただ、昼間に蓄えた熱を屋根裏に抱えたままではなく、外気温の低下に合わせて屋根裏温度もきちんと下がっている。 この実測結果は、今回計算したパッシブ換気が実際に機能している、という考え方と矛盾しません。

計算上はかなり換気できそう → 実際に測ってみても、ちゃんと熱は抜けていそう

CFMそのものの実測ではありませんが、理論モデルと実際の温度挙動は少なくとも整合していました。

実際に計算してみて分かったこと

最初は「ファンもないし、パッシブ換気って実際どのくらい効いてるんだろう?」くらいの疑問でした。

でも、実際のベント長と屋根裏温度を入れてみると、無風でも約642 CFM。 さらに風がうまく当たれば、Intake側の押し込みとridge側の吸い出しが加わって1,000 CFM級まで見えてきます。

もちろん、これは実測CFMではありません。 ベント固有の圧力損失、屋根付近の局所風速、風向、周囲の家や木などで実際の値は変わります。

それでも、数十CFMではなく、数百〜1,000 CFM級になり得るというオーダー感はつかめました。 さらに夜間の温度ログでも、屋根裏温度が外気温へ追従して下がっていく様子を確認でき、少なくとも「計算だけの話」ではなさそうです。

屋根の穴だけに見えるけど、温度差で上がる空気、Intakeを押す風圧、ridgeから吸い出す負圧。 パッシブ換気、思っていたよりずっと面白いです。

Research. Try. Fail. Learn. Enjoy.

参考文献

  1. GAF. Cobra IntakePro® Rooftop Intake Vent — Product Data. NFA 9 in²/linear ft. Product data
  2. GAF. Cobra® Rigid Vent 3™ — Product Data / Attic Ventilation Guidance. NFA 18 in²/linear ft、balanced ventilation、1/300 rule. Product data
  3. ASHRAE. ASHRAE Handbook—Fundamentals, Chapter 59: Indoor Airflow Modeling. Pressure-loss dataがないopeningの代表値としてCd=0.6を使用する例。 ASHRAE Handbook
  4. Gullbrekken L, Uvsløkk S, Kvande T, Pettersson K, Time B. “Wind pressure coefficients for roof ventilation purposes.” Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics. 2018;175:144–152. DOI: 10.1016/j.jweia.2018.01.026. ScienceDirect
  5. Broan-NuTone. Roof Mounted Powered Attic Ventilators — Specification Sheet. 1,000 / 1,600 CFM級の製品例。 Specification sheet
  6. U.S. Department of Energy, FEMP. Optimizing Solar Photovoltaic Performance for Longevity. Standard Test Conditions: irradiance 1,000 W/m². DOE
  7. California Energy Commission. Monthly and Seasonal Daily Solar Irradiation — Houston, Texas. August horizontal irradiation: 5.47 kWh/m²/day. Report PDF

※ 本記事のCFM・ACH・排熱量は、実測した寸法・温度を使った簡易モデルによる概算です。実際の局所風速や製品固有の圧力損失によって変わります。

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